振られた私を御曹司が拾ってくれました。
婚約者
今日の午後は、他社の来客が3件も続き、やっと一息付けたのは、もう終業時刻が近いころだった。
少しぐったりとしながら、自席に戻ると、美優が勢いよく走って来た。
「琴音、今さぁ、同期の田中君に聞いたのだけど、ニュースだよ!」
田中くんとは、私たちと同期入社の男性で、営業部に所属している。
少しチャラいところはあるが、どこから仕入れるのか、かなりの情報通だ。
「美優、そんなに慌てて、何のニュース?」
「氷室専務のことだよ!」
美優から駿の名前を聞いて、心臓がドクンと大きく跳ねた。
「氷室専務が、どうかしたの?」
「うん、今日ね…氷室専務の婚約者だという女性が来ているらしいよ。なんかショックだよね~。」
「婚約者?」
美優の言葉を聞いて、急に顔から血が引くように冷たくなるのが分かった。
しかし、考えてみたら、駿に婚約者がいても不思議ではないし、私には関係のない事だ。
頭では理解していても、手が震える。
「琴音、顔色悪いよ…大丈夫?」