振られた私を御曹司が拾ってくれました。
「葉月(はつき)さん、起きられますか…葉月さん…」
女性が私の名前を呼んでいる。
瞼は重いが、どうやら目は開けられそうだ。
ゆっくりと目を開けてみると、真っ白な天井が見える。
「葉月さん、気が付きましたか?」
横から、優しそうな女性の声がした。
(私は死んでしまったの?)
声のほうに振り向くと、そこには白いナース服の看護師が心配そうに私を見ていた。
「…こ…ここは?」
すると、看護師は微笑みながら話し始めた。
「ここは病院ですよ。昨日、あなたは寒い中、凍死寸前で運ばれてきたのよ。」
「…運ばれた?」
「そうよ、男性があなたを抱えて病院に連れて来たのよ。身元が分からないから鞄の中を見させてもらったら、免許証があってね…あなたは葉月さんだと分かったのよ。」
「その男性は…運んでくれた男性は…どなたですか?」
「…名前は聞いてないけど、後で心配だから、もう一度来るって言っていたわよ。…ちなみに、すっごく素敵な男性だったわ。」
看護師はニコッと笑いながら、テキパキと手際よく、検温と血圧を測り、部屋を出て行ってしまった。
朝の巡回らしく、かなり忙しそうだ。
(忙しそうで、いろいろ聞けないな…。)