振られた私を御曹司が拾ってくれました。
私は、なんとか今日の仕事を終えて、帰る支度をしていた。
しかし、今日はとても帰りづらい。
駿と普通に話ができるのだろうか。
なんとなく帰りづらい私は、会社の近くにあるカフェでコーヒーを飲むことにした。
私はカフェの一番窓際に座り、何気なく外を見ていた。
会社近くということもあり、知った顔が通っていくのが分かる。
しばらく、何も考えずに外を見ていると、黒く大きな車が道路に停まるのが見えた。
(…この車見たことがある…そうだ駿が乗っていた社用車に似てる…)
間もなく、会社から数名の人が出て来た。
よく見ると、駿と桐生さんのようだ。そしてその後ろから、髪の長い美しい女性が出て来た。
桐生さんが車のドアを開けると、駿はその女性の手を取って車に乗せた。
そして、後を追うように自分も車に乗り込んだのだ。
“バタン”と音がして車のドアが閉まると、桐生さんは横に立ち、その場で深くお辞儀をした。
桐生さんは一緒に乗らず、お見送りのようだった。
恐らく、あの女性は美優が言っていた、婚約者だ。
長い黒髪が美しく、いかにもお嬢様という雰囲気がした。
一般庶民の私とは大違いだ。
無意識だけれど、桐生さんをじっと見ていた私の視線を感じたのか、桐生さんが私の方に振り向いてしまった。
…どうやら、桐生さんに見つかってしまったようだ。