振られた私を御曹司が拾ってくれました。
今日は会食があり、遅くなるので夕食はいらないと駿から連絡があった。
私は一人で夕食を済ませて、自分の荷物をまとめていた。
どのくらい桐生さんの家にお世話になるのだろうか。
かなり大きな荷物になってしまう。
なんとか荷造りが終わるころ、ちょうど良いタイミングで駿が帰って来た。
駿と桐生さん、そして引っ越しでお世話になった運転手の清水さんも今日は一緒だ。
「琴音、今日は桐生の家に清水が送ってくれる。僕が行きたかったが、祥子の関係者がどこにいるか分からないから、残念だが桐生にも止められてしまったんだ。」
私は清水さんに送ってもらえることに安心した。桐生さんと二人きりで車に乗るのは、なんだかまだ気まずい。
それに、運転手の清水さんは、ここに引っ越して来る時にお世話になっている、お父さんのような雰囲気の人で、とても話しやすい人だ。
清水さんは優しい笑顔で私に尋ねた。
「葉月さん、荷物はこの大きなバッグ3つでよろしいでしょうか?」
清水さんは荷物を持ち上げて、運び出そうとしている。
「…はい。お願いします。」
清水さんは頷くと、一足先に荷物を持って車に向かった。
駿は桐生さんの前に立ち、深く頭を下げた。
「桐生、琴音のことをよろしく頼む。」
すると、桐生さんはクスッと笑った。
「氷室専務、あなたとは長い付き合いですが、私に深々と頭を下げるのは、初めてですよね。葉月さんがどれだけ大切なんでしょうね…大丈夫ですよ。大切にお預かりします。」
そして、駿は私の頭を優しくポンポンと叩いた。
「琴音、できるだけ早く迎えに行くからな…それまで良い子にしていてくれ。」
「…もう、子供じゃないので大丈夫です。では、言ってきますね。」
駿は笑いながら、ヒラヒラと手を振ってくれた。
なんだか、ちょっと寂しい気持ちになる。