振られた私を御曹司が拾ってくれました。
「…葉月さん、駿様と別れてください。これはそのための手切れ金です。」
高橋という男性は、駿の実家で執事をしているという人物だった。
恐らく、駿のお父様が私の存在に気が付き、別れさせようとしているのだろう。
「…それは、できません。」
「では、金額をこの倍に致しましょう。」
「…お金はいりません。たとえ別れるとしても、お金は受け取りません。」
私はこの男の申し出を断った。
お金を出せば思い通りになるという考えには苛立つ。まったく失礼な話だ。
「葉月さん、別れないというならば、貴女は危険な目に合うかもしれませんよ。気を付けてくださいね。」
高橋という男性は、それだけを伝え、表情すら全く変える様子もない。
「危険って…どういう事でしょうか?」
「私の話はそれだけです。」
その男性は、勝手に話を終えると立ち上がった。
そして、軽くお辞儀をすると、すぐに去って行ってしまった。
私はしばらく呆然と立ち尽くしていた。
危険な目に合うとはどういうことなのだろうか。