振られた私を御曹司が拾ってくれました。

面接の時、私はこの会社を希望する理由として、大好きなスイーツの話をしたことは覚えている。まさか、その場に桐生さんがいたとは驚きだ。

桐生さんの気持ちはとても嬉しい。しかも、桐生さんは会社の女子が大騒ぎするほど、素敵な男性でもある。
…しかし、私の気持ちは桐生さんには…動かない。


「桐生さん、とても嬉しくて、私にはもったいないお話です。…でも、今の私は、どうしても氷室専務が頭から…心から…離れないのです。ごめんなさい。」


私はなぜか、涙が溢れてポロポロと頬に流れ出した。
桐生さんに申し訳ないという気持ちもある。

すると、桐生さんは、私の頬に流れる涙を親指で拭って、頬に優しく手を添えた。


「葉月さん…ごめん…君を苦しめてしまったようだね。…君の気持ちはよく分かった。もうこの話は終わりだ。忘れてくれ。」


桐生さんは、微笑んで立ち上がり、自分の部屋へと歩き出した。


「…桐生さん、おやすみなさい。」


私の言葉に反応するように、後ろ向きで手を上げた。
その後ろ姿を見て、心が締め付けられる。


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