振られた私を御曹司が拾ってくれました。

驚くような出来事はあったが、無事にスイーツフェスティバルは終了した。

今日はこれから大阪支店の方々と打ち上げの飲み会が用意されているそうだ。
あまり気は進まないが、支店長も来ると言われ、顔を出して挨拶するしかなさそうだ。

打ち上げが始まる前に、念のため桐生さんには大阪出張の連絡はしておいた。
心配を掛けないようにするためだ。

「葉月さん、今日はお疲れ様でしたね。」

私に声を掛けて来たのは、大阪支店の支店長だ。
そして、私の隣に座り、話し始めてしまった。かなりお酒を飲んでいるようだ。

「やっぱり東京の女性は綺麗だね…お肌もこんなに艶々だ。」

支店長は避けようとする私の頬を無理やり触ろうとする。


(…この人気持ち悪い…)


すると、突然支店長が大きな声を上げた。

「い…いたた…痛いじゃないか、誰だよ俺の腕を掴むのは…俺は支店長だぞ!」

そして、支店長が振り向くと、支店長は急に慌てた表情になった。

「支店長、いけませんね…これは立派なセクハラですよ。」

「ひ…ひ…氷室…専務、いらっしゃっていたのですか…。」


支店長の腕を掴んだのは駿だった。
私は駿の顔を見て、自然にポロポロと涙が溢れてこぼれ落ちる。


「…琴音、ちょっと遅くなったな、大丈夫か?」

駿はハンカチを差し出して、私に微笑んでくれる。

「でも、なんでここに駿が居るのですか?」

「桐生から報告を受けて、心配になって駆け付けたんだよ。間に合って良かった。」


桐生さんは、駿に私の出張を伝えてくれていたのだ。
駿は残った仕事を、全て桐生さんに押し付けて来てしまったと言っている。
桐生さんが少し可哀そうに思う。

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