振られた私を御曹司が拾ってくれました。
「琴音、お疲れ様~フェスティバルどうだった?」
美優が笑顔で近づいてきた。
「美優、お土産買ってきたよ…開けてみて。」
私はスイーツフェスティバルで美優にお土産を買っていた。
人気パティシエのお店の新作チョコレートだ。
一粒ごとに繊細な花の形になっている。見ているだけでも嬉しくなるようなチョコレートだ。
美優はチョコレートの入った箱の蓋をそっと開けた。
「うわぁ~綺麗!琴音ありがとう。」
すると、さらに後ろから男性の声がした。
「葉月さん、出張お疲れ様でした。…戻って早々に悪いけど、社長室に一緒に来てくれないかな。」
驚いて声の方に目を向けると、そこには秘書の桐生さんが立っていた。
「桐生さん、…社長室…ですか?」
桐生さんはゆっくりと頷いた。
社長室なんて行ったことが無い。それどころか、社長に直接会うのは、新入社員の入社式以来かも知れない。社長はこの会社の代表取締役だが、他にも顧問をしている企業などがあり、会社にもあまり来ていないと聞いたことがある。
歩き出した桐生さんの後ろを、私は追いかけるように付いて行った。