振られた私を御曹司が拾ってくれました。
二階堂晴臣が部屋を出て行った後、駿は私と桐生さんに向かって微笑んで見せた。
かなり無理をしているのがわかる。
「桐生、悪いけど琴音をスイーツ開発部まで送ってくれ…僕は父と二人で話がしたい。」
桐生さんは無言でその場でお辞儀をすると、私の背中をそっと押して社長室から出るように促した。
桐生さんは社長室の扉を閉めると、何も言わず歩き出した。
そして、駿の言う通りスイーツ事業部の入り口まで私を送り、別れ際に口を開いた。
「氷室専務を信じてください。彼はあなたを裏切るような男じゃありません。」
「…はい。」
桐生さんは私の頭をポンと優しく叩くと、向きを変えて歩き出した。
(…桐生さん、ありがとうございます。私は駿を信じています。…)
桐生さんも言っているように、駿は裏切るようなことはしない人だ。
でも、余りにも今回は問題が大きすぎる。
駿はこの会社の次期社長として背負うものはとても大きい。
この会社の社員とその家族の生活も守っていかなくてはならないのだ。