振られた私を御曹司が拾ってくれました。
海外からのお客様
その日の夜、桐生さんは家に戻らなかった。きっと駿と一緒なのだろう。
今回のことで、やはり駿と私とでは、住む世界があまりにも違い過ぎることを痛感した。
会社に勤める一社員が考えてもどうにもならない問題だ。
翌日から、私はなるべく駿のことは考えず、自分の仕事に取り組むことにした。
私が考えても仕方がない事だからだ。今は自分が出来ることをするしかない。
仕事へ一心不乱に取り組むことで、少しは気もまぎれる。
幸い仕事もやることが山積みだ。
先日、急遽行くことになったスイーツフェスティバルの質問や、意見、さらには嬉しい注文の問い合わせなどが多数寄せられている。私はその処理を黙々と始めていた。
スイーツフェスティバルには、海外からのお客様も多く来場されていた。
私は特に海外のお客様には、日本の和菓子をアレンジした商品を紹介することにしていた。
すると、問い合わせに中に嬉しい書き込みもある。
『私はある国から日本の視察に訪れていて、偶然にフェスティバルに参加したものです。ぜひ我が国にも和菓子風のお菓子を紹介したい。それと会場に来ていた、KOTONEさんにぜひもう一度お話を伺いたい。』
なんと嬉しい書き込みなのだろう。冷やかしかも知れないが、しっかりと連絡先も記入されている。そしてうちの会社に来てみたいとメッセージも添えられていた。
私は慌てて上司である課長に伝えた。
「課長!大変ですよ…すごく嬉しい書き込みですー――――――。」
私は実際の書き込みを課長に見せながら、説明をした。
KOTONEと私の名前があるので、恐らく私がご案内したのだろう。
フェスティバル当日はかなりの人数が来場されていて、どんなお客様だったのかは、全く分からなかった。