振られた私を御曹司が拾ってくれました。
…驚いた、こんな事があって良いのだろうか。
氷室専務は、なんと先日私を助けてくれた “しゅん” と名乗る男性だった。
「あ…あの…氷室専務、先日は大変お世話になりました。」
「もう、身体は大丈夫なのか?」
「…はい。お陰様で元気になりました。」
すると氷室専務は、優しい微笑を浮べた。
そして、それ以上は何も言わずに、去って行ってしまった。
隣に居た美優は驚きで、声が出ないようだ。
口を数回パクパクとした後、やっと美優は声を出した。
「こ…こ…琴音!なんで氷室専務を知っているの?なんで琴音に話しかけたの?」
「ど…ど…どうしてだろう…ねぇ…」
美優は私の顔をじっと覗き込んだ。
私はこの瞳に弱い。
黒目が大きく、くるんと丸い形の瞳は、私の中まで覗き込んでいるように感じるのだ。
(…美優には嘘がつけないな…)
「…美優、全部話すよ…今日の帰りにご飯食べに行こう…その時に話すよ。」