振られた私を御曹司が拾ってくれました。
課長は、フェスティバルでの書き込みメッセージをもう一度読み返し、大きく頷いた。
そして、笑顔で話し始める。
「葉月さん、これは嬉しいメッセージだな。海外からのお客様じゃないか、会いたいと言っている…すぐに連絡してくれ。」
「はい、連絡してみます。」
私はすぐに、このメッセージをくれたお客様へ連絡する。
お客様の名前は、『アジーム』と書かれている。アラブ人系の名前なのだろうか。
しかし、メッセージは英語で書かれているため、英語は分かるのだろう。
私は恐るおそる、書かれている電話番号に電話をしてみた。
すると、驚いたことに電話に出た男性は、日本語で話し始めたのだ。
「KOTONEさんですか。お電話ありがとうございます。」
「アジームさん、日本語もお話になれるのですか?」
「僕の母は日本人です。だから日本語は話せますよ…」
『アジーム』と名乗る男性は、母親が日本人だと言っており、かなり日本語は堪能のようだ。
外国語なまりもなく、日本人とほぼ変わらない話し方に驚いた。
アジームさんは、ぜひうちの会社に他のスイーツや食品を見に来たいと言ってくれた。
私はすぐにサンプルを取り寄せる手配を急いだ。
数日後、いつも通りボディガードの未来は会社入り口まで送ってくれる。
「未来、一応念のため伝えておくね。…今日はスイーツフェスティバルに来てくださった海外のお客様と会社で約束しているの。全く問題は無いと思うけど、未来には伝えておくね。」
「…はい。でも気を付けてくださいね。社内なら大丈夫だと思いますけど…」
未来は少し心配そうな顔をしながら、私を会社のロビーまで見送ってくれた。
そして、エレベーターを待っていると、偶然にも桐生さんが通りかかった。
ここ数日、桐生さんは夜遅く帰って来て、朝はすぐに出てしまうので顔を合わせていないのだ。
「桐生さん、おはようございます。…毎日お忙しそうですね。」
「葉月さん、なんだかお久しぶりですね。変わったことはありませんか?」
「…桐生さん、特にここ数日は何もありません。…あっ、でも今日は海外から初めてのお客様が会社に来る予定なんです。」
「…海外の方ですか…気を付けてくださいね。」