振られた私を御曹司が拾ってくれました。
私はこの二人に会って、一つ疑問があった。
こんなにも美しいアジームさんとフェスティバルでお会いしていたら、絶対に印象に残るはずだ。
しかし、まったく覚えがない。どうしてなのだろうか。
「…あの…アジームさん。…失礼ですが…大阪でのスイーツフェスティバルで、本当にお会いしていますか?」
すると、アジームさんはクスッと悪戯な表情で笑った。
アジームさんは秘書のカシムさんへ何か合図をすると、カシムさんは鞄から何か取り出した。
アジームさんは後ろを向いて何かを顔に付けているように見える。
そして、ゆっくりとアジームさんはこちらに振り向いた…その顔を見て衝撃を受ける。
丸い鼻に、ぽってりと膨らんだ頬、顎もだいぶしゃくれている。
さらに、私の目の前で丸い形の黒縁眼鏡をかけて見せた。
「KOTONEさん、どう?似合っているでしょ。」
「アジームさん!凄いです。まるで別人です!」
これでは分からないはずだ。全くの別人になっている。
少し太った外人で、普通に街に居そうな感じの男性だ。
この風貌だったら、印象に残らなくても不思議はない。
すると、秘書のカシムさんが説明を始めた。
「KOTONEさんは、ご存じないかも知れませんが、アジームはアラブの第2王子で、顔が周りにバレてしまうと危険なんです。」
「…えっ!王子って…」
アジームさんはクスクスと笑いながら話した。
「KOTONEさん、そんなに驚かないで欲しいな…本当はちょっとお忍びで日本に来ただけなんだけど、街を歩いていたらスイーツフェスティバルの大きなポスターが気になってね…僕は甘いものに目が無いんだ。」
「そ…そうなんですか。」