振られた私を御曹司が拾ってくれました。
アジームさんがアラブの第2王子とは、驚きすぎて言葉にならない。
「KOTONEさん、ぜひこの会社で扱っているスイーツを、全部うちの国でもみんなに食べさせたいんだ…それで、考えたんだけど、アラブにこの会社のスイーツ製造工場を作らないかい?お金はこっちで用意するよ…どう?」
そんな大きな話は、私の手に負えない。私は慌てて口を開く。
「あの…私はただの平社員なので、そういう相談は上に相談しないと…少しお待ちいただけますか?」
私は慌てて上司を呼びに行こうとした時だった。
「…実は少しこの会社について調べさせてもらったんだ。そうしたら、面白いことが分かったよ。スイーツ部門ではなく、石油関連でうちの国に進出しようとしているみたいだね。しかし、その裏にはある人物が係わっていて…この会社は利用されているようだぞ。」
ある人物とは、まさか…二階堂晴臣。
会社が利用されているとは、どういうことなのだろうか。
「アジームさん…その人物は…二階堂晴臣ですか?」
アジームさんは、その名前を聞いてニヤリと笑った。
「分かっているなら、話が早い。…それと、僕は君についても調べたんだ。もう一つ面白い事が分ったよ。」
「…何を調べたのですか?」
「KOTONEさん、君は氷室駿君の恋人だろ?…でもその駿君は許嫁がいて、二階堂の娘だ。二階堂晴臣はそれを利用して、自分たちが儲けようとしているんだ。二階堂は中東の権力者に口利きをして、この会社と両方からお金を貰うつもりだろ。もちろんこの会社にも利益はあるが、無理に石油関連の事業に手を出す必要は無いはずだ。」
「…二階堂晴臣に騙されているのですか?」
さらにアジームさんは、妖しい笑顔で話し始める。
「僕はまだ今だったらこの会社を助けられる…そして駿君も無理やり許嫁と結婚しなくて済むことになる。…でもそれには条件がある。」
「…条件ですか?」
アジームさんは妖しい表情のまま大きく頷いた。
「僕は、君が気に入ったんだ…君が僕の国に来てくれれば、この会社も駿君も助けてあげるよ…琴音。」
アジームさんに名前で呼ばれて、心臓がドクンとした。
この人は何を考えているのか分からない。
「あ…あの…アジームさん…何を仰っているのか…私は…。」
「琴音、僕のことはアジームと呼んでくれて良いよ。…スイーツ工場の件も、会社を助けることも、そして駿君が無理に許嫁と結婚しなくて済むことも、全部約束する。…君が僕のところに来てくれれば…だけどね。」