振られた私を御曹司が拾ってくれました。
船内は思った以上に広い。
小さな豪華客船といった雰囲気だ。
広々とした応接には、シャンデリアが天井から輝き、奥にはバーカウンターも用意されている。
さすが、アラブの王子様だ。豪華さも桁違いだ。
「琴音、シャンパンでも飲まないかい?島に着くのは明日の朝だから、ゆっくり寛いでくれ。」
「明日って…そんな…では、私はいつ帰れるのですか?」
アジームは悪戯な表情で笑みを浮かべた。
「いつだろうね…?僕の気が向いたら帰らせてあげるよ。」
「何を言っているの!」
私は鞄を開けて、携帯電話を探した。
しかし、いつも入っている場所に携帯電話が無い。
「…電話が無い…まさか…。」
「うん。悪いけどプライベートアイランドの情報が洩れるといけないから、携帯電話は預かっているよ。無くさないから安心して。」
いつの間に鞄から携帯電話を抜き取ったのだろうか。
これでは、誰にも連絡が出来ない。…どうしたらいいの。
「駿君は、大切なお姫様を助けられるかな?」
私は楽しそうに笑っているアジームを睨んだ。
この男は何を考えているのだろう。
「君が僕のものになってくれれば、一度家に帰らせてあげる。…あぁ、でもすぐに君をアラブに連れて行くけどね…。」
「私は、貴方のものにはなりません。」
「…そう。でもいつまで強気でいられるかな。」