【書籍化】離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています
勝負服には、クローゼットの奥深くに眠っていた、上品な淡いグレーのミモレ丈のよそ行きワンピースをチョイスしてきた。
長い髪はコテでふんわり巻いて、平凡顔には気合いを入れていつもよりほんのり華やいだメイクを施してきた。
あの日、島田さんから“見合いへの覚悟”とやらを求められた受けた私だけど、全くもって気持ちがブレることはなかった。
それどころか、むしろ――
『――あなたの好きな秘書室の悪魔は、あなたを手籠めにしようと目論んでるような、とっても悪い奴かもしれないですから――』
忘れられるわけがないよ……。
そっと、指先を自らの唇に伸ばす。
そんなこと言う割に、彼から与えられる口付けはとっても甘くて優しくて、何度思い出してもトロケてしまいそうになる。