【書籍化】離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています

ヤワヤワと食みながらしっとりと唇が交わって。たまに誘うように唇に触れる滑らかな舌は、私のよりも少しぬるくて。頬に触れる骨ばった大きな手のひらは、優しい力加減で頬を包み込む。

抵抗しようと思えば振り払えたし。やめてと言えば彼はすぐにやめてくれただろう。

それでも、そんな判断に至ることなく縋り付いていた私の心なんて。彼がどんな思惑を秘めていようとも、――もう、決まっている。

島田さんだって、本気で忠告する気なら、あの場で告白した私を盛大にフッて突き放すことができたはずだ……。

それをしない彼は、何かを企んでいるにしても……私を傷つけないようにと気遣ってくれる、とっても優しい人だと思う。

その後、決意が薄れないうちに、帰宅中、言われた通り会長にメッセージを残した。

【お見合いのお話、謹んでお受けいたします】

見知った間柄なのに、お見合いと言っていいのかはわからないけれども。
< 118 / 135 >

この作品をシェア

pagetop