【書籍化】離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています(秘書室の悪魔とお見合いしたら)
「じゃ――藤森はそろそろ戻っていいぞ」
しかし。しばらくして。
そんな浮足立つ気分で残務と向き合っていた私の脳内を、会長の機嫌の良さそうな声が、バッサリと切り裂いた。
え……?!
慌てて時計を確認してみれば、もう終業時間の十八時を数分ほど回っている――?!
ずっと島田さんのお見合い話に心を囚われて、すっかり頭の片隅に追いやっていたけど!! そうだった!!
『大事な話し』だ! ど、どうしよう……!
まったく心構えができておらず、急にそわそわと焦りだす、私。
反射的に終わってもいない仕事をデスクの中へ突っ込んで片してしまうのは、秘書としての会長への気遣いが染み付いているからか、なんなのか。
いくら進退が問われる前触れとはいえ、ボスを待たせることだけはしたくなかった。
しかし脳内はデスク内同様、しっちゃかめっちゃかだ。