【書籍化】離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています

「じゃ、國井、俺は今日はもう帰るぞ、戸締まりは頼んだ」

ええ……は、早っ?!

いつの間に秘書室に戻る準備を整えた藤森さんは、私の肩をポンと叩いて、

会長に丁寧に挨拶をすませると、ルンルンと役員室をあとにしてしまった。

いつもは私や坪井さんを捕まえて、終業後の無駄話に花を咲かせるくせに。こういうときの素早さは一級品。

「……お疲れさまでした……」

ものすごく楽しそうな後ろ姿。

閉じた扉をぼんやりと見つめていると、

「――國井さん」

ギギギッと首を動かして振り向くと、

いつの間にか応接テーブルに移動している会長が、こっちこっちと笑顔で手招きをしている……っ!
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