【書籍化】離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています
なんだかどこかで聞いたような話。
じわじわと足元からなにかが駆け上がってくる。
けれども慌てて頭を振って押し込めた。
「本当だったら、ここで紹介できたらいいんだが、いかんせん、呼んでやってくるような奴でもなくてね……。あまりにも仕事ばかりで女っ気がないものだから、知り合いのお嬢さんとの見合いを何度か組んでみたんだが、度々、相手から直前になって断りを入れられる始末だ……。これはあやつが、裏で何かをしているようにしか思えん」
会長は困った素振りなものの、その当事者を心から案じているのがわかるような優しい口ぶりで、耳を疑うような話しを連ねていく。
押し込めていた感情のフタがカタカタと音を立て始める。