【書籍化】離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています

「だから、顔見知りかつ、奴に助けられたことのある國井さんなら、あいつの気を変えられるんじゃないかと思ったんだよ」

「もしかして、その人とは……」

いけないと思いつつも、ついに、我慢が利かなくなる。口を挟んでしまった。

思い当たるのはひとりだけ。
そんなことをできる頭のキレる人も、会長をかわせる人も、そうそういない。

耳の中で鼓動がこだまする中、会長がさらりと口を開いた。

「――島田だよ」

ふわりと宙に浮いたような気分になった。

「――この前、ふと君が何年か前に島田に医務室に運ばれたことを思い出してな。そうしたら妙にふたりの姿がしっくりと来て、不思議と居ても立っても居られなくなったんだ」

フッと鮮やかに色づくあのときの記憶。
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