【書籍化】離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています
ほのかなグリーンの香り。包まれると逞しい腕。そして、恋に落ちた柔らかな笑顔。

どうしよう……。いざ名前を耳にしたら、破壊力が凄まじくて、胸が苦しくなる。
膝の上でスカートをきゅっと掴み、熱くなる心を密かに落ち着けた。

「悪魔やらアンドロイドやら、影で言われているようだが、わしは、あいつの優しさを理解できる人と結ばれて欲しいと思っている。わしのことも常に気にかけてくれる優しい君なら、あいつの懐にも入れるような気がしたんだ」

「――会長、でも……」

色々と戸惑いを覚えて意見しようと思ったものの、会長はゆっくり首を横に振ってそれを制してしまう。

「もちろん、無理にとは言わんよ。さっきも言ったように、裏から操作してせっかくの見合いを捻り潰す、けしからんやつだ。しかしな、仕事に真面目なあいつが、ひたむきで努力家な君を評価していないはずがないと思ってる。うまく言葉にできないんだが……普通ならこんな身近な知人を引き合わせたりはしない。わしは、君なら悪いことにはならないだろう、という予感を持って、今回は声をかけさせてもらった」

穏やかな眼差しで、熱心に訴えかけてくる会長。
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