【書籍化】離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています
なんだか想像以上のことに、まだ頭の中が混乱している。
失恋かと思いきや、まさか会長からの大事な話しはお見合い話しで。
それもその相手は、ずっと思い続けてきた島田さん。
この上なく嬉しいけれど、同時にいろいろな情報も得てしまい、頭の中は軽くパニック状態だ。
『ひたむきで努力家な君を、評価しているはずだ』
『君ならあいつの懐に入れるような気がした』
会長はそんな嬉しいことを言ってくれたけれど。
これといってなんの取り柄もなくて、業務外では一切話したことがない私。
おまけに、仕事だってまだまだ半人前だ。
そんな私と、顔を合わせようと思ってくれるだろうか。
廊下で歩行を緩めて、窓の外のオレンジに染まる空をそっと見つめる。
もちろん、このチャンスを逃したくない気持ちは大きいけれど。
会長の言うとおり、島田さんが破談を企ててきたとすれば、今回だって何も起きないわけがない……よね?
キュッと喉の奥が詰まったような切ない気持ちになり、思わずシフォンブラウスの胸元を掴んだ。
どう返事をすればいいものか……。
「ずっと好きでした」なんて、とても言い出せる状況じゃない気がする……。
ため息をこぼしながら、秘書室に足を踏み入れた瞬間だった。