【書籍化】離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています
「――いいえ。私が待っていたのはあなたですよ……國井さん」
ギジリと扉が軋み、微かなグリーンの香りが鼻をくすぐる。
……え。
顔をあげると、扉に手をついて頭のてっぺんから、長い睫毛に縁取られた切れ長の瞳が私を捕らえていた。
突然の状況に理解できずに、息ができなくなる。
どういう、こと……?
「なるほど。國井さんは私がなにも知らないと思っているんですか……平和な人ですね」
もしかして――。
「会長の企んでいることなんてお見通しですよ。そろそろ次の縁談を持って来るだろうと思っていたら、今度の相手はあなたですか」
背中を冷たいものがしたり落ちた。
「なぜ……知ってるんですか……?」