【書籍化】離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています

横を通り過ぎようとした、ダークスーツの腕をぐっと引き止めていた。

「……國井さん……?」

足を止めた島田さんが怪訝そうに振り返る。

「こ、これは……、会長への気遣いとかじゃなくて、私の意志です」

「――!」

キッパリ告げると、切れ長の瞳が丸くなる。

それを見て、一瞬怖気づきそうになるけれど、手のひらをぎゅっと握って、自分に活を入れた。

「ゼネラルマネージャーには申し訳ないのですが、私が引き合わせてもらいたいから、会長にお願いしたいと思っているんです。だから、迷惑でも無駄でもなくて、私の気持ちです……」

鬱陶しがられるのはわかっているけれど、誤解されたまま全てが終わってしまうのは嫌だと思った。

私の意志や気持ちまで消えてなくなってしまうのは、悲しすぎるよ。
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