【書籍化】離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています(秘書室の悪魔とお見合いしたら)

 十台程のカウンターデスクが配置される、こじんまりとしたシンプルな秘書室。

 いくら声を潜めていようとも、背後でそんな話をされてしまえば、タイピング音に混じって否応なしに耳に飛び込んでくる。

 なんとなく気が逸れそうになるけれども、耐えて、自らのボスである我社の会長――漆鷲(うるわし)(さかえ)の本日のスケジュールに目を通す。

 ……とりあえず仕事に集中、集中。

 ――ここは、都内港区に大きく構える、漆鷲ホールディングス本社ビル、ニ十七階・秘書室フロア。

 旧漆鷲(うるわし)財閥の流れをくむ我社は、業種や業態が違うあらゆる一流企業をマネジメントする純粋持株会社であり、

 私、國井(くにい)(さくら)・ニ十七歳が、大学を卒業後からかれこれ五年ほど勤める企業である。
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