【書籍化】離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています
島田さんはしばしその場で呆然としたあと、ゆっくりと私の方に体ごと向いて、
「あなたの意志だとしたら、なら……なおさら、なぜ、この見合いにこだわるんですか?」
そんなことを言って、そっと首を傾げた。
「え……?」
「この見合いに、あなたにはなんのメリットもありません。相手は私ですよ? 國井さんのような女性なら、すぐに出会いがあるでしょう。……なのに、なぜそんなに、私に拘るんですか?」
底知れない感情の読めない瞳が、真っ向から私を見つめて問いかける。
きっと彼は、私からの好意なんて、これっぽっちも予想していないのだろう。
ふるりと胸の奥が熱を持ったように震える。
「それ、は……」
まっすぐ見つめたら、溢れるようにこぼれ出てきた。
「……すき、なんです」
「――…」
眼鏡の奥の瞳が大きく見開かれ、キラリと輝いた。
一度口にしてしまえば、もう止まらなかった。
「五年前に助けてもらったあの日から、ゼネラルマネージャーのことが、ずっとずっと好きだったんです。だから……メリットがなくたっていい、こだわりだってします。相手がゼネラルマネージャーであることに意味があって……、引き会わせてもらいたいと思ったから――」