【書籍化】離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています
このあと彼によって、お見合いは無かったことになってしまうかもしれない。
だけど、この気持ちだけは、どうしても、無かったことにしてほしくなかった。
ただの強がりに聞こえるかもしれないけれど。
誤解されたまま終えるほうが、私にとっては耐え難いことだったに違いない。
そっと心で息をつく。
――とはいえ、この状況は、もうこの恋を終わりにしなさいという、神様からのお告げだろう。
ここまではっきり拒絶されたんだ。
そう思うと、自然と頭を下げていた。
「――では、数々の無礼を失礼しました……後のことは、お任します」
悔いはない。悔いは。
一礼し、自分の心で区切りをつける。
帰り支度を整え、バックを片手に秘書室から逃げだそうとした――そのとき。