【書籍化】離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています
「……待って」
ドアノブに触れようとした後ろ手を、ぐっと捕らえられた。
見ると、いつの間にか背後にいた島田さんが、私の手首を掴んでいた。
「……え……あ、はい?」
なんだろう?
こういっちゃなんだけど、返事とかは別に求めていない。わかりきっているのだから。
だけど、島田さんは、眼鏡の奥の底知れない感情の読めない瞳でまっすぐ私をみつめたままだ。
なかなか言葉を口にしようとしない。
――な、なに?
……悔いはないはずなのに、その瞳に見つめられると、
どんどん、どんどん胸が締め付けられるような切なさがこみ上げてきたりして……。
耐えきれなくなって、もう一度声をかけようとしたところで、