【書籍化】離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています

……え

「決めるのは、あなたです」

次の瞬間、凄みに圧され後ずさる私を部屋の奥へとどんどん追いやってしまう。

え、ちょっと……! なに……!? 

脳内は一気に大混乱となる。

なんでいきなり、異様に楽しそうな顔してこっちに迫ってくるの……?!

そんな顔はじめて見ましたけど!

「えっ、あの……」

「ん?」

二重瞼を縁取る長い睫毛が怪しげに揺れる。

意味がわからず心で盛大にわめきながらも、いつもと違った雰囲気の彼に魅了され、今にも卒倒してしまいそう。

「考え直してくれるのは嬉しいんですが……色々追いつかないというか…… これももしかして忠告ですか――…あっ」

命乞いをしている間に誰かのデスクがコツンと腰にぶつかってしまい、行き場を失う。手元からポスんとハンドバッグが床に落ちた。
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