【書籍化】離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています(秘書室の悪魔とお見合いしたら)

はじめは優しく翻弄するように、

それからだんだん熱っぽく息を飲み込むように濃密に。

ふたりきりの秘書室に、唇を重ねる湿っぽい音が響く。

ふいうちなのに、ちっとも強引じゃなくて。

甘い快感を呼び覚ますような唇の動きと、時おり私の髪をすく長い指先で頭がいっぱいになった。

やがて、ひとしきり私を翻弄した唇は、最後にちゅっと下唇をもてあそんだあと、

名残惜しさを植え付けながらゆっくりと離れていって――。

「……ほら、こんなふうに。あなたみたいに無防備な人は軽々と食べられるかもしれない」

ペロリと自らの濡れた唇を舐めて。それから、肩で息をする私の唇を指先でするりと拭って。

「だから……お越しの際は覚悟するように」

そう耳元で甘く囁いて(ちゅうこくして)、艶やかな笑みを浮かべたのだった。
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