【書籍化】離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています(秘書室の悪魔とお見合いしたら)
――この世に、理屈でどうにもならないことが、存在するとは思わなかった。
言うまでもなく、このとき翻弄されていたのは俺の方だっただろう。
今なら、間違いなくそう思う。
國井 桜という女性は少しだけ変わっている。
今どきの若手社員では珍しく、礼儀正しく生真面目で素朴。
控えめでありつつも、しっかりと通った芯と、どんなに忙しくとも音を上げず、常に笑顔で仕事と向き合う強い精神力の持ち主……と把握している。
確か、プライベートになると人が良すぎると、藤森が休憩時間に案じていたのを聞いたことがあるな。
……まぁ、たまに指示をしたあとに見せる気の抜けた“へにゃん”とした笑みは、すぐに悪い男に絆されそうな危うさがある。
平均身長より小さめの百五十センチほどの小柄な身長に、強く抱きしめれば折れてしまいそうな華奢な体。