【書籍化】離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています
そして華美ではないがひとつひとつ整った顔のパーツは、実年齢のニ十七歳よりも若く見える。
可愛いのかと聞かれれば、おそらく十中八九は、小動物のようで可愛らしいと言うだろう。
まぁ、アンドロイドや悪魔だの言われる俺だが……唯一。彼女に限っては、新入社員の頃からひたむきな姿勢は評価していた。
とはいえ――まさかこんなことになるとは……。
そんなことの始まりは、昨日のことだった。
「――はい?……会長が私のことを呼んでいる……?」
朝の風が舞い込む漆鷲フーズの社長室。
出勤早々俺を呼び出した漆鷲永斗は、執務デスクから金髪碧眼のビスクドールのような面立ちでニコリと笑いながら、とんでもなく恐ろしいことを言い放った。
「そ。明日の就業前に、本社に挨拶に行くんだろう? そのときに執務室に寄ってくれってさ」