【書籍化】離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています(秘書室の悪魔とお見合いしたら)
「真面目な國井ちゃんが見てないわけないよ」
――と口を挟むのは、その隣のデスクの5つ上の敏腕秘書、坪井まさるさん。爽やかな塩顔イケメンの彼は、秘書室のお兄さん的存在だ。
二人は我が社で最も多忙を極める、会長ご子息の“漆鷲はじめ”社長の第一秘書と第ニ秘書を務めている。
「……私はなにもみてないよ」
瞬時に2人の言いたいことを察した私は、エントランスの巨大掲示版を知らんぷりした。
「嘘ついてんじゃないわよ」
「いてっ!」
すぐに友子の手が背中にのびてきた。
手加減なしだから、ほんとに困る。
わかっている。世の中そんなに甘くないのだ……。
背中をさすりながら、すぐに返事を改めた。
「……会長の親友のお孫さんが来るって話しでしょう?、事業にも関わった大切なお客様みたいだよ。バイリンガルでも対応できない部分もあるから、知識豊富で語学堪能のゼネラルマネージャーを、“フーズ”から、引っ張ってくるしかいないんだって」