クールな美形王子の誘惑
前の方は見ないように、さくらちゃんと彩奈ちゃんに挟まれるようにして並んでいると。
「すいません、そこのおねーさん」
「……はい?」
サングラスをかけ、マスクをつけ、ニット帽を被った怪しげな男性がさくらちゃんに話しかけてきた。
「……あー…すいませ〜ん。
今忙しくて〜」
さすがに怪しすぎる容姿に、彩奈ちゃんも警戒心丸出し。
探るような視線を男性に向けたら、
「ちょっとの時間もない?」
サングラスをクイ、とわずかに下にさげ、
覗いた瞳に、彩奈ちゃんが「ほわぁ!!」と声をあげた。
「しーっ!
目立ちたくないから」
人差し指を立てて彩奈ちゃんにそう言う男性。
いや、でも…
「その格好の方が目立ってますよ、
八雲さん」
まわりに聞こえないようにこっそりそう言ったら、
「え、まじ?」と気まずそうに眉を下げたのはわかった。(サングラスとマスクのせいで眉しか見えなかった)