クールな美形王子の誘惑
そして中3の冬。
そんな俺の考えを、変えてくれる人が現れた。
入試の試験会場に向かって、駅から歩いていた俺の耳に、その人の声が届いた。
『すみ…っ、すみません…!!』
緊張したような、震える声が後ろから聞こえて、ゆっくりと振り返る。
できれば俺のことじゃなければいいんだけど、と思っていたけど
その女の子は、俺のすぐ後ろにいた。
「……!!」
え、なになになに。
なんでこんな近づいてくんの?ていうか誰。
同じ中学な人でもないし、知り合いでもない…。
人違いを口実に、俺に近づこうとしてるとか?
今までの経験上、その行動が怪しすぎて、一歩後ずさる俺。
そんな俺に女の子は
『あのっ、落としましたよ!』
息を乱しながら、一枚の小さな紙を俺に差し出していた。