クールな美形王子の誘惑
「……やっぱりその、
恋人には…なれません」
「………そっか」
まだお互いのこと、全然知らないよ。
知らないのに、私のどこに惹かれてそう言ってるのかわからない。
「梓くんは、もっとちゃんと考えた方がいいよ」
「え?」
「ちゃんと好きな人に言わないと」
“友達への好き”と、ごちゃごちゃになってるんだよ。
じゃなきゃ、私が梓くんに好きになってもらえるところなんてひとつもない。
最初に梓くんの顔を見た、あの受験の日だって。
受験票を落とした梓くんを必死に追いかけるあまり、
汗だくで、髪もくしゃくしゃで、マフラーもズレてて。
梓くんのまわりに来る女の子たちみたいに、初見が“一番良い姿”なわけじゃない。
たまたまあの時のことをきっかけに話すようになったから、好きとか言ってくれてるだけで…
他の女の子とだって、無視せず話したら好きになるのでは?