クールな美形王子の誘惑
……そうは言ったけど、
実際道具を買ったところで、たぶんやらない気がする。
誰かに振る舞うわけじゃないのに、自分が食べるためにわざわざ作るのって面倒。
腹減った〜って思ってから作るって、手間すぎ。
って思っちゃうから、いつもコンビニとかで済ませてしまう。
「今日はコンビニでご飯買ってきます」
『結局いつもそうじゃん!』
希子さんとのこういうやり取りも、日常茶飯事。
そろそろ希子さんも、なんにもやらない俺に呆れてると思うけど。
『ちなみに何食べる気?』
「牛丼の気分です」
『野菜もちゃんと食べてね!?』
希子さんはお母さんみたい。
うちの母さんはおっとりしてて文句も言わないし、むしろ甘やかされすぎたんだと思う。
だから本当は一人暮らしも不安だったけど、
希子さんがいてくれるから今は安心してる。
でも感謝の気持ちを直接伝えるのは恥ずかしいから、「はいはい」と軽く返事をして電話を切った。