魔法の使い方２ 恋のライバル、現る！？

一章

「ただいま！」

　ミーナの凛とした声が花の森(フロシア・シルトゥス)に響き渡った。

　バタバタと音を立てて、妹であるソロルが屋敷から出てくる。屋敷といっても貴族を呼んでパーティーをする大きな屋敷ではなく、森の奥の開けた地にひっそりと建つ小さな屋敷だ。

「お姉ちゃん！？」
「ただいま、ソロル。杖と魔法書を取りにきたの」

　ソロルはポニーテールを揺らしながらミーナを家に招き入れる。帰ってくるとは思っていなかったのだろう。相当驚いている。




　屋敷はミーナが出ていったときと何も変わっていなかった。家を空けていたのは数ヶ月だったが、とても懐かしく感じる。

　入ってすぐの広間に足を運ぶと、ミーナの母マーテルがハーブティーを飲んでいた。彼女に気づくと、優しい声で迎え入れた。

「おかえりなさい。大活躍だったのね」
「記事、読んだんだ」

　ミーナが少し恥ずかしそうに返すと、ソロルが笑いながら入ってくる。

「お父さんなんか、新聞抱えて森を走ってきたんだよ！」
「あれは面白かったわねぇ」

　マーテルもニコニコしながら付け加える。

　ミーナは父が慌てる姿を想像して笑ってしまった。すらりとした体躯に品位のある面持ちに反して、間抜けな一面があるお茶目な父だ。しかしそれでもエリート魔法使いなのだから、世の中というのはわからない。

「今日の晩はごちそうを作らなきゃ。ソロル、手伝ってね」
「はーい！」

　マーテルの言葉に、ソロルは返事をした。彼女はいつも手伝いに不満をこぼすことがない。

　長旅で疲れていた彼女はカバンを持って階段へ足を向ける。

「私、部屋に荷物置いてくるね」
「荷物持つよ？」
「ありがとう！ お願いしてもいい？」
「もちろん！」

　ソロルに手伝ってもらい、自室に着いたミーナは旅の格好からルームドレスに着替えていた。ベッドに腰を掛けた途端眠くなり、そのまま夢の中へ微睡む。