魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
三章
 陽歌(ヒラルス・カヌトス)の看板がいつも通りの位置にかかっている。二週間いなかっただけなのに、何故か懐かしく感じてしまう。ミーナはドアにつり下げられているベルを鳴らして、店の中へ足を踏み入れた。

「ただいま!」
「おかえりなさい、ミーナ。長旅で着かれたでしょう。今日明日はゆっくり休みなさい」
「お気遣いありがとう。明日はアデルとレネに会いに行こうかな」
「たぶん今日来ると思うよ」
「わお」



 店内には他にも知った顔が。テーブル席に座る彼は、特に何でも無い顔をしてコーヒーを啜っている。カップをテーブルに置くと、相変わらずの調子で口を開いた。

「久しぶりだな、レディ・マグノリア」
「だからファミリーネームで呼ぶなと」
「おや、これは失礼」

 彼女は呆れた表情をしたあと、カバンから包みを取り出した。ヴィオルドに近づき、彼の前に差し出す。

「ほら、これあげるから大人しくしなさいよ。こっちはドルークさんに」
「律儀に用意したんだな。ドルークにまで。何が入っているんだ?」
「アルツィラーヌ村の手前にあるサリユール町のお菓子。甘さ控えめで人気商品なのよ」
「そうか、ありがたく戴いておく」

 二人が話しているとユリウスがヴィオルドの向かいにカフェオレを置き、ミーナに声をかける。

「ここにカフェオレ入れておいたから飲んでね」
「ユリウスさん、ありがとう!」

 そのままヴィオルドと向かい合わせに座り、カップに口付ける。今まで会わなかった分を取り戻そうと、その後も不毛なやりとりは続いた。なのに彼らはいきいきとしていて楽しそうだ。
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