魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
 ミーナが呪文を唱えると、無数の光の粉がきらきらと彼女の周りを舞い始めた。

 目の前の光景に目を見開くエルシニア。そして妬ましそうに呟く。

「魔法……」
「手に入れたいと思っても簡単に得られるものじゃないわ。これはね、望んだだけで出来ることではない」
「それがあれば、何でも思い通りにできそうねぇ……」
「私はやっとの思いで魔法を掴んだの。それに魔法は貴女が思っているようなものじゃないわ」
「アナタ、魔法が使えるのにどうして小さな店で店員なんか」

 風が彼女の髪をゆるやかになびかせる。かき消されるように光は消えたが、陽光に照らされた髪の艶が踊る。ミーナは微笑をたたえて、エルシニアに語りかけた。

「私がそうしたいからよ。あの店に関わる人との交流が楽しくて、いつの間にか私のもう一つの家みたいになってた。一方的な貴女と違って、私は周りの人達の言葉に耳を傾けた。だから」
「もういいわ。つまらない話は聞きたくない。さようなら、賢い魔法使いさん」

 彼女の言葉を遮ったエルシニア。

 自らの過ちに気づいたが、それでもプライドの高い彼女は認めたくなかった。これ以上ミーナの話を聞き続けることがこの上なくつらく感じた彼女は、強引に会話を終わらせる。ミーナに別れを告げて、足早に去って行った。

 エルシニアの後ろ姿を見送りながら、彼女はヴィオルドに解雇の心配はなくなったと伝えに行こうと考えていた。先程のエルシニアの表情から察するに、衛兵の上層部へ苦情を入れることはなさそうだ。こんなにも早く解決するとは、誰が知っていたのだろうか。

 本来の目的である解雇を避けるための作戦会議が結果の報告になろうとしていることに滑稽さを感じながら、ミーナはヴィオルドのいる王都警備隊本部へ足を進めた。
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