魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
「ヴィオルド先輩、ミーナさんが来てますよ」

 ドルークの声で、ヴィオルドは別の同僚との会話を止めた。ドルークの横にいる彼女に視線を合わせる。ミーナの表情がすっきりとしたものであることに違和感を覚えたが、構わず手招きする。

「待ってたよ。いま俺と話してたのはフィル。まだまだ下っ端の見習いだ」

 柔らかい紅茶色の髪に深い青の瞳。あどけなさの残る顔立ち、すらりとした体躯。ヴィオルドに負けず劣らずの容姿に、ミーナは軽く感心する。

「ミーナさん、ヴィオルドから話聞いてました。気軽にフィルって呼んでください」

 ミーナはフィルの声を聞いてすぐに聞き返す。少し低めだけど、どこか違和感がある。

「あの、もしかしてフィルって女の子?」
「はい。けど女で衛兵って反対されてばっかで。髪切って男のフリして入隊したけど、すぐバレました」

 フィルの本名はフィリパであるが、それは女性名のためフィルで通している。フィルという愛称はフィリップなどの男性名に使われるため、衛兵の中での呼び名として都合がよい。フィリパが性別を偽って入隊したときから、フィルと名乗っていた。

 入隊してから一定期間、見習いとしてひたすら訓練しつつ雑用をしなければならない。フィルは今その見習いであり、ヴィオルドが稽古をつけてあげることが度々あった。

「ねぇ、フィルって何歳?」
「十六ですよ」
「同じね! タメ口でいいわよ!」

 同い年の女の子ということで舞い上がるミーナ。興奮ぎみにタメ口を提案した。

 フィルは快諾し、彼女たちは楽しく雑談を始めんばかりといったところであったがそれを遮る者がいる。

「本題を忘れるなよ、ミーナ。お前なんでここに来たのか覚えているか?」
「あ、そうだった。もう心配する必要ないわ。たぶん貴方の首はとばない」
「は? どういうことだよ、急に」
「さっきエルシニアに会ったの」

 ミーナは本部に来る前のいきさつをヴィオルドに説明した。赤褐色の瞳をぱちくりさせながらも一応は理解したようだ。
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