魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
 先程の嘘を思い出しながら帰り道を歩く。

 露店が両脇に立ち並ぶ道は賑やかだ。彼女は街行く人々をぼんやりと視界に入れながら、自分の世界に浸り考え込む。一人になったおかげで、彼女の頭は冴えてきた。

 ヴィオルドにだって仲の良い友人くらい居るだろう。卑屈に生きてきたミーナは友達を作ることをしてこなかったが、彼とは違う。フィルとミーナではフィルの方が知り合ってから長いだろうに。




 先程感じたおいてけぼり感は恐らく寂しさなのだろう。ヴィオルドにはミーナ以外にも素で話せる人がいる。少し考えれば分かる当たり前のことであるが、打倒エルシニアを通して妙な仲間意識を持っていたから寂しく感じたのだろう。以前まで憎まれ口を叩き合っている相手へ寂しさを感じたことに、彼女は驚いていた。

 外面が良いヴィオルドは基本的に外では紳士的な振る舞いをしている。では内というのはどこに対してだろうか。それが警備隊である。つまり、内の人間であるフィルに対して素で話すのは自然なことだ。むしろ外側の人間だったミーナと素でいられる方がイレギュラーなのである。




 傾きかけた陽光が黄金に色づき始めていた。街は仕事終わりの人達でさらに活気づいている。自分の中で答えを出せた彼女は街へと意識を向けた。思考に集中していて気づかなかったが、露店に並ぶ商品の値が下がっているようだ。

 今朝仕入れた野菜や果物、小麦粉やミルク、バターなど様々な商品が市場を彩る。売り子達も他の店に客を取られまいと声を張り上げ、道行く人々の談笑と和音を生み出している。

 田舎で育ったミーナには都会である王都エルテブールの賑わいが毎日お祭りがあるかのように感じられ、街を歩くのが好きである。彼女はついでに食材を買っていこうと思い、黄金に照らされる人混みの中へ消えていった。
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