魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
 宿舎を抜け出して黄昏れるヴィオルド。夜のひんやりとした空気が彼を包み、細い三日月が彼の整った横顔に(ほの)かな光を落とす。

「あれ、ヴィオルド。何してるんですか?」

 顔を上げるとランプを持ったフィルが、不思議そうにヴィオルドを見ていた。彼女の足音に気づけないほど気が遠のいていた。彼はフィルから視線を離して答える。

「眠れなくてな。お前こそどうしたんだ?」
「昼間のことが気になって、あたしも眠れなかったんです。……昔のことを、思い出していたんですか?」
「お前が気にする必要はない。もう遅いから寝ろ」

 そう言葉を残してヴィオルドはフィルに背を向けて去っていった。

 フィルはランプの火をそっと吹き消す。微かな月明かりが、彼女の寂しそうな顔を照らしていた。
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