魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
 翌日。ミーナは落ち着いた色のシンプルなドレスを着て、王都警備隊の本部へ向かった。門番に挨拶して、敷地内へ通してもらう。そんな彼女を見つけたドルークが慌てて彼女に駆け寄る。何事かと驚きながら、ドルークが口を開くのを待つ。

「昨日の夜、ヴィオルド先輩の様子がおかしかったんです!」
「何があったの? ヴィオは大丈夫なの?」
「本人は大丈夫だって言ってるんすけど、昨日の夜すっごくうなされてたんです。顔色も悪くて……」
「とりあえず本人に会うわ」

 ミーナが冷静に返すと、ドルークは彼女をヴィオルドの仕事部屋に案内し始めた。

 衛兵の朝は忙しく、他の隊員や警備隊以外の衛兵が慌ただしく働いている。ドルークは早歩きしながら、彼女に昨夜のことを話す。ヴィオルドが外へ出たあと彼は寝てしまったが、朝起きたらヴィオルドはいつも通りにしている。しかしあのときの彼の表情はただ事でない。

 ドルークが立ち止まった部屋には、「Forticela(上官室)3」と書かれたプレートが下げられていた。ミーナはそれを見てドルークに尋ねる。

「ここがヴィオの部屋? もしかしてあいつ偉いの?」
「そこそこ偉いですよ。衛兵の中でも実力あるんで。二十歳を超えていたら、警備隊幹部か親衛隊に選ばれてたでしょうね」
「今十八だっけ」

 警備隊の役目が宮殿のある王都の警護であり、親衛隊の役目は王の身辺警護を行うことである。衛兵の最高機関である親衛隊になるには、王に認められて騎士の称号を得る必要がある。しかし称号を得るには二十歳以上でなければならない。同様に、各機関の幹部になるにも二十歳以上の年齢制限が設けられていた。

 ドルークが上官室の扉をノックする。しかし返事がなかった。もう一度ノックするがやはり返事はない。じれったくなったミーナがドアノブを回すと、鍵がかかっていた。

「あーもう、いないのかしら。Yĥuï wīxå(開け)!」

 ミーナが呪文を唱える。カチャリと音を立てて鍵が開いた。

 もともと魔力の高いミーナだ。少し練習しただけで、杖がなくても魔法がある程度使えるようになっていた。そのまま彼女は勢いよくドアノブを回し、堂々と部屋の中へ入った。

 一方ドルークはヴィオルドの部屋へ押し入って怒られないか、ヒヤヒヤしながら金魚のフンのようについていくだけである。
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