魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
 アルベールの事件から、数日が経とうとしていた。ヴィオルドはすっかり生気をなくしてしまう。朝も昼も夜も、ただ淡々と死んでいないから生きているだけという状態だ。口数も少なくなり、両親も含め団員とほとんど口を利かなくなった。

 しかし団員は誰もヴィオルドのことを気に止めず、依然として犯罪集団としての仕事は続いていた。

 そんなある日の夜のこと、薄暗い小屋の中央で大人達数人がランプを灯してテーブルを囲んでいた。彼らは賭け事をしながら雑談をしており、テーブルの上には飲みかけの酒やカード、お金が無造作に広がっている。

 手元のカードを見ながら、団員の一人が仕入れた情報を話し始めた。

「最近、エルファ商会ってとこが儲かってるらしいぜ」
「へぇ、警備はどうなんだ?」
「もともと小さな商会が急に儲かり始めたもんで、手薄そうだったぞ」

 参加している他の団員はカードをめくる手を止めてその情報に聞き入る。久々に大口の仕事となるかもしれない。

「そこから金を強奪すれば、しばらくは遊んで暮らせそうだな」

 ヴィオルドはエルファ商会の名前が出た瞬間から、彼らのやりとりを一字一句漏らさず聞いていた。アルベールは父がそこで働いていて、将来彼も働きたいと言っていた。

 ――アルベールの家族が危ない。

 エルファ商会が襲撃される場面に、アルベールの父が出くわしたら必ず被害に遭う。そしてエルファ商会が潰れてしまえば、アルベールの生活も苦しくなる。資金を調達できなければ、屋敷を売ったり、爵位を返還したりしなければならない。ヴィオルドはエルファ商会襲撃を見過ごす訳にはいかなかった。裏切ってしまった大切な友に、せめてもの償いを。

 ヴィオルドは私物の中からあるものを取り出した。今日こそこの計画を実行するのにふさわしいのかもしれない。そろそろ潮時だ。

 取り出したものを懐に隠し、大人達が集まっている酒臭いテーブルに近づいた。何でもないふりをして雑談に加わる。ヴィオルドの様子を大して気にしていなかった団員達は、彼の参加を何とも思っていなかった。

「カードゲーム、誰が勝ってるんだ? 一番儲かってるのは?」

 さり気なく話題をカードとお金に変える。団員達の視線は一番勝っている者へと集中する。そのまま彼らは本日の勝者について盛り上がり始めた。

「おめぇ、今日はツイてるじゃねーか」
「昨日は負けっぱなしだったのによう」
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