魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
 ヴィオルドの誘導で、その場の者達は全員勝者へ視線を向けたまま。その隙に彼は懐から隠したものを取り出した。

 液体が入った小瓶。毒である。団員達がカードゲームのことに気を取られている間に、ヴィオルドはそれをテーブルの上の酒に入れていく。全員が酒を飲んでいるわけではないが、ほとんどの者達が飲酒していた。

 会話に一息ついた団員達はさらにアルコールを欲してボトルやグラスに手をかける。一気に飲み干す者もいれば、少しずつ飲む者もいる。彼らはその間も騒がしく談笑を続けていた。

 ヴィオルドは彼らを注意深く観察する。使ったのは即効性ではなく、数十分後に効果が現れる毒だ。何人が飲んだかを数え、残り何人が毒を摂取しなかったかを計算する。そして残りを始末する算段を考えなければならない。失敗したら自分が死ぬことになる。

 幸いほとんどの者達が毒入りの酒を飲んでいた。あと飲んでいないのは五人。そこにはヴィオルドの両親も含まれていた。

 しかしヴィオルドは考えを上手くまとめられなかった。彼は人間に毒を盛ったのだ。それはやがて摂取した人間の身体をむしばみ、死へといざなう。もう後戻りはできない。以前は人の死を何とも感じていなかったのに。ヴィオルドは頭のなかが真っ白になっていた。

 暗赤色の瞳は混乱の色に満ち、毒を飲んでいないにもかかわらず息苦しく感じてしまう。そのせいで息が荒くなり、手足も痺れて自在に動かせない。目の前の光景がどこか遠く感じた。

 ――しっかりしろ俺! アルベールとエルファ商会を守らないと!

 自分自身に活を入れ、奮い立たせるヴィオルド。もう混乱の色はなかった。正常な息づかいを取り戻し、身体は自由に動いた。

 彼は一旦テーブルから離れ、毒の効果が現れるのを待つ。
< 41 / 88 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop