魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
 ヴィオルドにとって、その数十分は永遠のように長く感じた。最初の一人がうめき声をあげて苦しみながら倒れた直後、また一人、そしてまた一人、と倒れていった。彼らが異変を感じた頃には時遅し、そのまますぐに意識を奪われていった。

 幸い毒を口にしなかった五人は目の前の光景に唖然としていた。倒れた団員に駆け寄り大丈夫かと声をかけるが、死んでいることに気づく。彼らが倒れていく団員に気を取られている隙に、ヴィオルドは死体から剣を抜き取り、そのうちの一人に斬りかかった。しかし剣を持つ手が震えていて急所を外してしまう。それでも動けないほどのダメージを一人に与え、その団員は床に崩れ落ちた。

 他の二人がそれに気づきヴィオルドに襲いかかる。間一髪で避けたヴィオルドは二人を一気に応戦することとなった。大人二人に子供一人では分が悪い。守りに精一杯で攻めることができず、彼は苦戦している。どんどん()されて、足は後ろへ下がる一方だ。

 そんな中、ふとヴィオルドの両親が視界に入った。彼らは少し離れたところからヴィオルドを見て、気味の悪い笑みを浮かべている。それを見た瞬間、ヴィオルドは鞭で打たれて目を覚ました気分になった。あれを野放しにしてはいけない。

 ヴィオルドは今まで両親から受けてきた仕打ちや、彼らの性格を思い出す。もう手の震えは消えた。彼は目の前の敵二人を上回る速さで急所を突く。そして勢いを保ったまま、両親の前へ突進した。

「殺したところで俺達からは逃げられない」
「アンタにはアタイらと同じ人殺しの血が流れてるんだから」

 剣を向けているヴィオルドに、二人は嗤いながら言葉を吐く。口から離れた言葉は呪詛(ずそ)のようにまとわりつき、彼を(むしば)む。前へ進む速度は落ちていった。両親の前で歩みは止まる。

「俺は……俺は違う!」
「けど、お前は既に人殺し。さすが俺達の子だ」
「やめろ!」

 叫びとともに両親を斬りつけたヴィオルド。しかし父親はナイフでそれを防いだ。ヴィオルドは予想外の動きに目を見開いて驚く。両親との斬り合いが幕を上げた。
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