魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
 ヴィオルドの前では態度に出さなかったが、ミーナが一番気になっていたのはユリウスのことではなかった。もちろんそれも気になっていたが、最も気にしていることではない。

 彼女にとって一番気になっていたのは、なぜフィルがヴィオルドの過去を知っているかである。けれど深く知ってはいけない気がして、質問する気が引けてしまった。

 それにしても、なぜ彼女はフィルのことでモヤモヤしているのだろうか。以前にもヴィオルドとフィルが楽しそうに話すのを見て寂しい気分になったことがあった。胸がキュッと締め付けられたように痛い。

 ミーナはその痛みを振り払おうとするかのように軽快に走り出した。今はそんなことより、薬の調合だ。早く薬草屋に寄って帰ろう。

 彼女はヴィオルドを助けたいのだ。実家から持ってきた魔法書を夜ふかしして読んでおいてよかったと思う。





 ミーナは陽歌(ヒラルス・カヌトス)に戻ってすぐ、部屋にこもって調合を始めた。側面に穴が空いたラクダ色の陶器でできた箱を机の上に起き、箱の内部に薪を、箱の上には小さな片手鍋を置く。店のキッチンで薬を作るわけにはいかないので、実家から持ってきた調合用の器具を使う。

Bŷgĕzh(火よ)!」

 火を起こす呪文を唱える。ボッという一瞬の音のあと、陶器の箱の側面にある穴から燃えているのが見えた。続けてミーナは本に書いてある手順にそって、刻んだ薬草を水の入った片手鍋に入れていく。

「えっと、まずは夕咲き草の花びら五グラムで、沸騰したら風切り草の葉っぱ八グラムね、それから……」

 ミーナは材料と入れる順番を精密な(はかり)に乗せながら、一つ一つ照らし合わせていく。少しでも量を間違えたり、順番を間違えたりしたら失敗してしまう。集中力が必要な作業だ。
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