魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
 ()の光は完全に消え、外は暗くなっていた。空には欠けた月が頼りなさげに輝いている。ミーナはすっかり待ちくたびれてしまった。

 そんな彼女とは対照的にエノテラ通りは酒盛りする人々で賑わっている。楽しそうにしている彼らが、別世界のように思えた。




 一度自室に戻ろうとしたときだ。彼女は扉が開く音がしても振り向かず、背を向けたまま店の奥へ行こうとしていた。どうせ普通の客だろうと商売人にあるまじきことを考えていたミーナは、聞き慣れた声に呼ばれて立ち止まる。

「自分から呼びつけておいて俺が来た瞬間姿を消そうだなんて。やっぱり帰ろうか」
「待ってヴィオルド! ……コホン、待ってたわよ、被験者第一号。よく来たわね」
「待つか待たれるかどっちかにしろよ」

 慌てて呼び止めた直後。ミーナは落ち着いたフリをしようとお高くとまった笑みをうかべる。勿体ぶった台詞は役者のように言ってみせた。すぐヴィオルドに鼻で笑われてしまったのだが。

「う……とにかくお掛けなさい。今から薬を授けましょう」
「まだそのキャラ続けるんだな」
「あぁもう、うるさいわね! はい薬。寝る前にスプーン一杯。用法・用量は守って正しくお使いくださいね!」

 ミーナはぶっきらぼうに薬を押しつける。しかし口元は笑っていた。ヴィオルドも心なしか普段より表情が柔らかかった。

「とにかく、昔のこと、話してくれてありがとう。そんなことより、……そうよ! ユリウスさん本当に何者?」

 ヴィオルドの過去を「そんなこと」で終わらせ、ユリウスの過去について思い出すミーナ。薬作りとヴィオルドのことで、今まで頭から抜けていた。そんな彼女の発言にヴィオルドは苦笑する。突拍子のない言動は彼の肩の力を抜かせた。

「あれっ、ヴィオルド話したのかい?」

 当の本人、ユリウスはヴィオルドに紅茶を出しながら不思議そうに二人の方を見た。
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